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swimming constellation について

2020 年製作 NY JCAT ギャラリー個展作品
邦題「泳ぐ星座」。これは、当個展のシリーズ「想いとともに更けゆく夜」を製作するきっかけになった作品です。
この作品は2020年6月、コロナ禍によるステイホーム期間に生まれました。
この時期は、いつも以上に家とその周辺の都会で小さく暮らしていました。
高くて四角い建物がそびえたつ街路を歩いていると、見上げた空はそれらの壁やたくさんの電線に切り刻まれて、いびつな形をしています。
空は、確実にこれらの向こう側に、昔から変わらず広がっている。
頭では分かっているのですが、なんの障壁もないままの広い空を見たい。
美しい大空へのあこがれや理想は、わたしの中で静かに蓄積されてゆきました。
そして、オーロラのような空を描くという行為によって、それが表出するに至りました。
この期間は、絵を描く技法について実験を重ねていった結果、好きな技法がひとつ見つかった時期でもありました。
それまでは線画を中心に描いていましたが、いよいよ万年筆インクを広い面に塗りたくなったのです。
広い空が見たくなったことは、すなわち広い面が見たくなったということだったのかもしれません。
持っていた紙の中から特に丈夫なものを再確認。水をたっぷりと使って書道用の太い筆を運び、キャンバスの向きや角度を変えながらインクを流していきました。
これによって、「自分の作為」と「自然の造形(水の流れ)」の両者を、バランスをとりつつ作品に盛り込むことができるようになりました。
わたしは、ペットショップでいろいろな小さな生き物をみることも好きです。
小さなものにも確実に宿っている命にわたしははっとさせられる瞬間があり、そのとき、生命ひとつの尊さや美しさを見出します。
自分で描いたオーロラの流れをみていて、同化するようにそこを泳ぐ魚のイメージがひらめきました。
この魚のモデルはベタやグッピーといったとても小さな魚から来ていますが、空を泳ぐときその薄いひれはどこまでも広がり身体も雄大になっており、命のきらめきをふりまいています。複数のラメインクの輝きが細かく背景へ広がり、それを補佐しています。
使用画材は
万年筆インク
・Diamine "Starlit sea" , "Blue pearl" , "Shimmering sea"
・カキモリ "Pink lemonade", "Twincle yellow"
・Pelican highlighter ink "green" , "yellow"
・ナカバヤシ「浮世絵インク 歌麿梅紫」「すなおいろ 橙」
次亜塩素酸ナトリウム溶液